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あね

今夜はお前のために

あれから一年経ったなんて、なんだか信じられないよ。今日はお前の命日だ。


LINEで人伝に知らせを聞いた時は、耳を疑ったよ。いろんな人に連絡を取って、どうやら本当らしいとわかっても、でもやっぱり信じられなかったよ。


実は、周りの人が思っていたほど、親しい間柄だったわけじゃない。考え方も合わないことが多かったし、嫌いなところも多かった。特にコロナになって、仕事場で顔を合わせることもなくなって、ますます音信不通だったな。


「友人」だったかと聞かれれば、もちろん「友人」だったんだけど、胸を張って「俺の友達」と言えるほどには、お前のこと知らないし、気にかけてやれなかったな。


正直に言えば、仕事で成功していたお前のことを伝え聞くたびに、嫉妬を覚えたりしていたよ。小さいよな、人間がさ。


もっと話しておけばよかったな。


もうお前はいない。


俺とお前は生まれた年も同じだけど、お前はあっちに逝ってしまて、俺はこうして生きてる。


目覚めた時に、あー、よかった、今日も生きてる、そんなことを思う朝が、最近は増えてきたよ。お前のせいだぞ。


死んだら、葬式で何の曲をかけて欲しいなんて、そんなことを考えるには少し早すぎる年齢だったけど、St. Louis Blues じゃないことは確かだな。聞いときゃよかった。


あれから一年経った。


今夜の Requiem の練習は、ちょっとだけお前のために歌うことにする。ちょっとだけだぜ。ありがたく思えよ。


それじゃ。



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